木器保存研究室 
 主に発掘調査で出土した丸木舟・建築材などの大型木製品や農具・木簡・祭祀具・曲物などの生活に係る木製品、網代・籠などの植物製遺物を保存処理しています。
 出土木製品は、長い間土に埋まっているうちに、土中の水分を含み、傷んだ状態になっています。そのためそのまま放置すると、木材内部の水分が蒸発し、収縮や変形が生じてしまいます。
 木器保存研究室では、木材内部の水分を薬剤に置き換え、形状を維持できるように保存処理を行います。
 保存処理法としては、主に
ポリエチレングリコール含浸法(PEG含浸法)真空凍結乾燥法糖アルコール法のほか、当研究所独自のアルコール・キシレン・樹脂法脂肪酸エステル法があります。この中から、木製品の劣化状態や木の種類(樹種)、木取り、付着物の有無などをよく観察し、木製品の特徴に応じて適切な方法を選び処理を行っています。
〜保存処理工程を一部ご紹介します〜
1.処理前調査・
クリーニング
2. 遺物の養生・
薬剤へ含浸
 3.表面処理・
接着・復元
4.整形・彩色

保存処理を行う前に、形状や劣化状態を調査し、記録しそれに基づいて、それぞれの遺物に適した保存処理法を選択し、遺物の状態に注意しながら表面をクリーニングします。


写真のように、大きな遺物を保存処理する場合、その大きさ・形に合わせて保護枠を作製し、溶剤を含浸させます。
薬剤含浸後、遺物の表面に付着した薬剤を除去し(表面処理)、破片は接着し、接合部分など遺物の強度が弱い部分は、エポキシ樹脂を用いて補填することもあります。

補填している様子

接着剤を補填した部分を整形し、彩色を施します

(写真は、アクリル絵具で彩色している様子)
〜樹種同定〜
樹種によって、保存処理中に収縮や変形をおこすものがあります。
保存処理前に樹種同定を行い、変形などを防ぐために
遺物に最も適した処理法を選択しています
  
木の組織を顕微鏡で観察します
 
木材組織の顕微鏡写真

特徴からどのような樹種であるか絞りこんでいきます
 主な実績
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